House in Fuji-nanroku|富士南麓の家|diagram
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「Process of the Works|住宅の設計方法」(オーム社)
建築は、建物と他者(自然・事物・存在)との関係性の秩序から見いだされる領域のようなものだと考えています。
建築は目には見えませんが、建物を介することで新たな発見や再認識の気付きを私たちに与え、感情の喚起という驚異がそこに生まれます。
建築設計という思考の視点を通して、様々な要件を関係づける建物を導き出し、建築を求めていきたいと考えています。
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「Process of the Works|住宅の設計方法」(オーム社)
実相寺|開運山 壽福殿 清心院 毘沙門堂
昨今の形式的で簡便な葬儀の在り方をはじめ、私たちの身の回りに溢れる様々な欲を満たす為の情報の氾濫などが原因となって、日常と死との距離が、以前に比べ急速に乖離しつつあるように思う。
それは、通夜を執り行うための小さな御堂のご依頼を頂いた寺院の御住職も感じられていたことで、独居老人や核家族化が増加していることも相まって、古くから続く寺院を中心とした地域のコミュニティまでもが、年々希薄になりつつある、ということだった。
計画においては、通夜を執り行う場をつくると同時に、地域コミュニティの新たな芽吹きとなるものを思考し、根源的な意味での「生と死の祈りの場」をつくることに行き着いた。
通夜の場で故人(死)と向き合うということは、故人(死)と自己(生)との記憶に向き合うということだ。するとそれは自然と自己(生)を見つめるという行為にもつながっていく。
つまり、死を通じて生へ、そして生から死へと、我々の存在(命)への思考のループが生まれていくことである。
この思考のループをつなげることで、他者や、事物、風景、記憶、そして自身を、本当の意味で慈しむことができるのではないだろうか。
その感情は、誰かと挨拶を交わすことや、誰かに手を差し伸べることなどの日常のコミュニケーションの発端へとつながっているように思う。そしてそういった日常の何気ないやりとりの先に、新たなコミュニティが生成されていくのだと考えた。
このように、根源的な意味での「生と死の祈りの場」を思い巡らせながら、建築家、家具作家、金物作家、造園家、その他多くの職人達、そしてクライアントである宗教家と協働することで、生と死に向き合うことのできる静謐な空間を目指した。
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仏教上、八角形という形は宇宙全体や世界の中心を意味するといわれている.その八角形の骨格を四角形のボリュームの中に内包させ、故人と自己が向かい合うための謂わば世界の中心をつくろうと試みた。
八角形を成す放射状の壁(耐力壁)が空間の中心を規定しながら御堂全体を支え、また余白の壁(雑壁)に囲われた残余空間には機能的に必要な諸室を配した。
素材は、仏教的な意味を纏った栗材、光を豊かに導く砂漆喰の天井と壁、視覚的な重量感を持った磚を張った床など、感覚に作用する力を持った、自然に近い素材を効果的に採用することで、中庸で静かな背景となるよう努めた。
空間の中央に置かれた安置台に故人が横たわり、それを囲むように近しい人々が椅子に腰掛け、故人との最後に思いを馳せる…
その状態のあるべき感覚や空間の姿を意識しながら、放射状の壁とそれらをつなぐ梁型、レイヤー状に光を制御する開口部、水平垂直方向の寸法体系の統合や、空間の重心を整えることで、「他者の死と自己の生」へと向き合うための、静謐な秩序を空間に纏わせることを目指した。
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毘沙門堂と、境内を形づくる本堂。
それら「生と死の祈りの場」を中心としながら、それぞれの余白である軒下の陰翳の豊かさや、境内をひとつにつなぐように計画した庭などが、周辺環境やそこで暮らす人々を柔らかく受け入れはじめている。
生と死を孕んだ空間の狭間を、生き生きと駆け抜ける子供達。
庭の草木を眺めながら散歩をするお年寄り。出会えば自然と挨拶を交わす。そこに小さなコミュニティの芽吹きを感じる。
それぞれの抱える「生と死」にそっと手を合わせ静かに向かい合うことと同時に、それを取り巻く環境や日常の営みが、より豊かなものとなって繋がっていくこと。
そしてその先に、この世界を平静な視点で見定めることのできる確かな指標が生まれてくることを願っている。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | ワークショップ 安江一平 |
施工 | (株)クレバ建築工房(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
ishisone design 石曽根昭仁(サイン) | |
写真 | 山内紀人 |
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「Process of the Works|住宅の設計方法」(オーム社)
計画地は、住宅と畑の入り交じる古い街区を街の拡がりに合わせて新たに再編した土地である。幹線道路から外れた比較的静かな場所ではあるが、隣接してマンションが建つことや、近い将来、周辺の畑地に住宅が建ち並ぶことが容易に考えられることなどから、将来的な街に対する佇まいと住環境がどうあるべきかを含め計画した。
周辺の住宅の多くが前面道路からセットバックしてカーポートを設置し、敷地南側に庭を設けていることから、同様の配置形式を踏襲した。階高を1.5層程度に抑えた佇まいとすることで背後の敷地への日照を確保し、軒や庇によって内部空間と街とのつながりを調整した。またプロポーションの配慮とともに質感と素材を周辺の新旧住宅のイメージから選定し用いることで、周辺環境に混在する古さと新しさをつなぐ、この街区らしい豊かな風景の一部となることを意図した。
平面プランは矩形を単純に4分割し、そこに水回りブロックを連結した。4分割された空間それぞれに床レベルを与え、1階から2階へ円を描くような動線をつくりだし、吹抜け空間を中心としてそれぞれの場が緩く等価につながる構成とした。
違和感のない場の連なりを実現するため、無数の見えない線を断面方向に重ね、空間のプロポーションや開口部、仕上ラインを統合する寸法体系を構築し、空間の全体性と場の性質に合わせた人の居心地の重心をつくり出した。それは、音や言葉を積み重ねて見えないもの(存在)を形づくる、ある種の音楽や小説に似ている。実際には存在しない無数の断面線による接続によって、空間に豊かな奥行きを与え、静かな秩序が通奏低音のように空間全体を漂う。
光と陰翳、風に靡くレースカーテン、木々のゆらぎなど、心が感情を宿していく拠りどころとなるものを見つめることで、人の営みをそっと包み込む、静かな背景としての建築を目指した。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | ワークショップ 安江一平 |
施工 | 山崎工務店(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
一木一木 佐藤洋一(別途造作家具工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
写真 | 山内紀人 |
規格化したスチールフレームによるローコスト住宅の計画。
計画年|2021
設計 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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施工 | クレバ建築工房(建築工事) |
写真 | 加藤新作 |
市民体育館と多目的グラウンド、公園エリアをつなぐ、中継拠点となるカフェの計画。
コンペ当選案。
計画年|2017
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日本の伝統技術である組子細工から着想した格子組構造の大屋根によって、透過する風景と賑わいをつくる。
格子組構造の屋根は、地元の森林組合と協議を行い、一般流通木材(杉・檜)の120mm幅材を2分割した断面H240mm×D60mmの材を用いる。一本の材をL1200mmの長さに統一し、組子細工のように組み上げて一枚の大きな屋根をつくる。
設計 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
敷地は田園風景の広がる温暖な土地に位置する。建主である若いご夫婦は敷地後方の母屋で家族三世代で暮らしていたが、出産・育児などを踏まえ母屋前方の土地に新たな住まいを計画することになった。母屋との関係を断ち切るのではなく、心地良い距離感をもった独立した場として、家族やたくさんの友人が集える新たな住まいが求められた。
水廻りを集約した「石の間」と、居間や室からなる「板の間」によって建物を構成し、その間(あいだ)を玄関へのアプローチとした。母屋に対しあえて閉じることで、自立したひとつの存在として住まいを扱いながら、かつての土間空間のような使い方を想定した「石の間」へ人を導くことで、訪れる際の意識的な敷居を下げ、母屋との物理的、心理的距離のバランスを取った。
建物内部は、「板の間」である居間を中心に、窓辺のベンチ、踊り場、食堂、台所と同心円状に居場所を設け、空間ごとの素材や視線、天井高さを統一することでつながりと奥行きを与えた。居間の南に面する大きな開口部から射し込む強い光を、角度をつけた壁によって横と下方向へと導き、吹抜け空間に大きな闇溜まりをつくりだすことで、座の空間としての重心を整えている。
こうして浮かび上がる光の空間が、家族やたくさんの友人が集う豊かな場の中心として、また家族の成長と共に、そこで営まれる暮らしの記憶を闇の中へゆっくりと宿していくような静謐な場となることを考えた。
2階は、居間上部の吹抜けとスリット状の階段室を介して闇の中に埋没させることで、眠りのための静けさと光の射す1階への意識を喚起させる。
陰翳や素材のもつ本質的な単純さを建築に宿すためには、それらを注意深く素直に見つめ続けることが必要だと思っている。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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施工 | 尾崎工務店(建築工事) |
写真(Web) | 新澤一平 |
写真(PressKIT) | 川辺明伸 |
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