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構造が象徴的な住宅の計画。
建築は、建物と他者(自然・事物・存在)との関係性の秩序から見いだされる領域のようなものだと考えています。
建築は目には見えませんが、建物を介することで新たな発見や再認識の気付きを私たちに与え、感情の喚起という驚異がそこに生まれます。
建築設計という思考の視点を通して、様々な要件を関係づける建物を導き出し、建築を求めていきたいと考えています。
構造が象徴的な住宅の計画。
計画地は、景勝地として有名な三保松原と御穂神社とを繋ぐ神の道沿いに位置する。以前は訪れる人が減少傾向にあったが、富士山と共に世界遺産となったことがきっかけとなって、現在では国内外から多くの人が訪れる観光地である。
地元でバーを営む建主から、新たな観光資源となるドッグランを併設したガーデンカフェ兼住宅を建てたいという相談を受けた。魅力的な敷地ではあるが、毎日多くの人が往来し、大きな松が一直線に並ぶ強い軸線をもった神の道との接続の仕方を考える必要があった。
三保松原は風景と共に羽衣伝説で有名だが、リサーチに訪れてみると、松を抜ける潮風が心地よく、枝間からのぞく砂浜や青い海がとても印象的だった.それら三保松原の風景を構成する要素を建築に取り込むことで、神の道の軸線を和らげつつも拡張することができないだろうか.
神の道からガーデンまで建物を介して視線が抜けるようにアルミサッシで建物を覆う構成とし、機能、プライバシー、耐力壁が必要な一部を除いて同一規格サイズのサッシを縦横方向に展開した。階高も規格サッシサイズから天井高を割り出すことで決定している。店舗部分では雁行する松並木の印象をもとに一部柱スパンをずらした。それは京都の蓮華寺の柱と庭の関係のように、建物内から庭を見る時に柱上部が視覚から消失することで、感覚的に庭が引き寄せられる効果を期待している。住居部分についてもこの環境を最大限享受することを考え、同様に外部サッシを連続した扉のない一室空間とし風景と繋いだ。また同時に、将来建物すべてをカフェや住居、宿泊施設などへ柔軟に転換できることも視野に入れ計画している。植栽は、神の道の松並木からガーデンテラスの流れで徐々に柔らかな印象となるよう樹木を選定した。
連窓サッシから潮風が抜け、木々が揺らぎ、レースカーテンをなびかせる。神の道を歩く人びとが松並木を抜けてこちらへとやってくる。コーヒーを飲みながらずっとここにある立派な松を見上げる。それぞれの風景を眺め合い、行き来する羽衣の揺らぎのような柔らかな関係性が生まれた。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 大栄工業(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
September design 出口由果梨(サイン) | |
写真 | 川辺明伸 |
富士山を見る離れの計画。
旧東海道。JRと私鉄。さび付いた鉄橋。川石でつくられた塀。路地。階段。古い寺院。大きな工場。新しい住宅群。高速道路の高架。街を囲む山々。天気の良い日にだけ見える富士山。
静岡県島田市金谷地区の高台にある敷地からは、街の古い部分と新しい部分、地形を貫くように流れる大井川、変わらない遠景を一望することができる。良くも悪くも時間を掛けて混ざり合い形成された街という塊を、ひとつの風景として感じられることは純粋に素晴らしい。
計画地は道路からひな壇上に傾斜した土地で、地形に合わせてうねるように積まれた川石の塀によって形成されている。北側へ開かれた丘陵地のため台風や強風などの被害が比較的多く、設計中にも屋根や外壁を損傷した建物が散見された。土地にはもともと古い家屋が建っていたこともあり、平地部については安定していたが、石塀を調査してみると土留めとしての構造耐力は期待できなかった。石塀を安全なものにつくり替えたり、敷地全体を造成するには予算の問題とともにこの場所の魅力を削ぐことになってしまう。
そこで、蜘蛛が糸をつかって様々な場所に巣を張るように、敷地条件をほぼそのまま引き受けつつ、単一の木材によって風景を編み込む住まいを考えた。まず、石塀を崖と見なし、安息角内にベタ基礎を定着させた。その上に120角のヒノキ材のみを用いて架構を跳ね出させながら井形に組むことで、各階の内部に柱のない構築体をつくりだした。1・2階ともに北側の連窓から風景を取り込み、南側のハイサイド窓等から日射を取り込む構成とし、建物外周には同寸の斜材を設けることで架構のねじれ防止と、崖崩れなど不測の事態にも耐え得る構造耐力を確保した。玄関及びアプローチ部分については跳ね出すことで上部地盤との縁を切っている。断面形状は構造材と同寸のH120mmピッチとなる高さを設定し、30×105mmのヒノキ材を120mmピッチで外壁に張ることで、跳ね出した架構との干渉を避けつつ、台風等の被害や老朽化に対して一枚単位での交換を可能にした。その他架構部材についても、統一したボルト締めによって将来的な更新を見据えている。またアルミサッシ部分は外壁同材をルーバー状に差し込むことで、日射調整及びプライバシーを確保した。
構築体によって風景を編み込むということは、街や自然の時間をこの場所に定着させるということだ。街の重ねてきた記憶(歴史)と、この場所で新たに暮らす人の記憶が混ざり合い、新しい風景が生まれることを願っている。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 桑髙建設(建築工事) |
金森正起(金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
富士山を見る離れの計画初期案。
計画年|2021
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目の内部を眼差しが移動する。
振り向いた先に建築を貫通する穴があり、視線に引っ張られ、放り出される。
空間は伸縮と回転を続けながら、もう一つの世界をつくる。
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 本田圭 |
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計画地は、三島市から箱根へと抜ける旧道沿いの高台に造成された分譲地である。設計段階に訪れた団地にはまだ建物もなく、段状に造成されただけの敷地には設計の手がかりとなるものは希薄だった。少なからず環境を平準化してしまう分譲地においては、より広い視野をもって、人の手では変わることのない風土を見い出し取り入れる思考が必要になる。リサーチ範囲を広げて古くからある旧道沿いを歩いてみると、谷のある地形と斜面に拡がる広大な畑、遠くまで連なる山々の美しい風景と共に、谷から吹く心地よい風や、風景に彫りの深い陰影をつくり出している日射しがとても印象的だった。
そこで、団地規定による敷地ごとの建物最大範囲から南側隣地の建物ヴォリュームを想定して、谷下から敷地へ抜ける風道を導き出し、その範囲上にLVLを重ね合わせた家型ラーメンフレームによる大きな軒下空間(パブリックリビングスペース)を設けた。そして、敷地に残る高低差を床の段差として取り込みながら、もう一方の1階に水回りと収納室、その2階に屋根裏空間(プライベートリビングスペース兼ベッドルーム)を設け、季節や時間帯、プライバシーなどに応じて居場所を自由に変えることができる谷のような地形を建物内につくり出した。ラーメンフレームの高さは、1、2階のヴォリュームと季節ごとの光の入り方を踏まえ決定した。メインフレームの東側には、南北に抜ける玄関と農作業時にベンチとしても利用できる土間、農機具などの収納スペースを、LVLフレームをかみ合わせることで設けている。
子供たちが土間テラスと大きな軒下をぐるぐると回りながら楽しそうに遊んでいる。大人たちは木陰のテラスで立ち話をし、猫はお気に入りの階段で昼寝をしている。土地固有の環境が風土をつくり出し、暮らす人びとの記憶を育んできたわけだが、谷風の抜けるこの大きな軒下が家族や近隣の人達を大らかに包み込み、かつての縁側や土間のようにこの地の風土と記憶を育み、継承していくことを願っている。
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 大栄工業(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
木造平家建て住宅をレストランへ改修する計画。
計画年|2021
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 本田圭 |
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敷地は富士山南麓の町の北部に位置する。建て主の父親が古くから所有する農地で、周囲を20m以上ある樹木に囲まれ、北側には比較的大きな工場がこの敷地を見下ろすように建っている。鬱蒼とした樹木群と工場、道路側のすでに使われていない家屋、敷地から見える仮設小屋など、全体として陰鬱で雑多とした印象であった。
建主が幼少期を地方の田舎で過ごし、薪割りを日課にしていたことなどを伺う中で、また自然と共に暮らしたいという強い思いを感じた。建築を介して自然と人の記憶を繋ぎ、より豊かな生活をもたらすことはできないだろうか。
まず、螺旋階段を中心にシンメトリーの柱架構と、各面で統一した開口部をもつ単純な矩形を敷地中央付近に配置し、自然の中に建築の領域を設定した。高さ方向は周囲の樹木に呼応するよう最高高さを7mとし、1階天井高を抑えて2階の気積を確保しつつ、3方向の開口部によって森との距離を近づけた。壁は砂漆喰によって架構を覆い塗り込めることで、建築自体が敷地の中の雑多なものを視覚的に切り取る背景となる。シンメトリーで単純な柱スパンから成る骨格に対し、皮膚のような表層をかたちづくる壁のシークエンスと光の陰影が、自然の秩序を踏襲し、奥行きのある空間となることを考えた。
自然という長期の時間軸と、人の存在という短期の時間軸が建築を介して対峙することで、より豊かな感情が喚起することを意図した。
建築を設計するということは、自然と建築をどう秩序立てるのか、人の深い部分で繋がる共通の感情を建築にどう結びつけるのかを反復的に思考することだと思う。それは、目の前の自然と人の記憶との豊かな応答だ.大きな欅の木を見上げる、あるいは足下に落ちている木の実を拾いあげることから、すでに思考は始まっている。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 匠工務店(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
金森正起(金物工事) | |
岡部工業所 佐々木俊夫(別途ストーブ工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
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