House in Nishichiyoda-cho|西千代田町の家|2021
日本家屋の様式や伝統を再構築する。
静岡市の中心部、駿府城へ続く街区の住宅地に建つ自邸の計画である。築城の際に資材運搬に利用した小川が近くを流れ、蛙の鳴く田園が残る。伝統的な日本家屋への尊敬から、開放性と奥を起点として様式や伝統を更新し、郷愁に陥ることなく、これからの日本の家の構築を試みている。
3×6間角の外周面に柱を900mmピッチで立て、切妻屋根の形状に結ぶ.1,800mmピッチに組んだ平たい格子梁を900mmずつ左右にずらして積層させ、梁架構をつくる。材のすべてを90mm角ヒノキ材としてコストの合理性を図り、柱材を抱き合わせることで、断熱層を設けつつ細長比をクリアする。こうして、階段室を中心としたワンルームに土間を含めて4つの床が生まれ、架構は建物内部に雲のように浮かぶ躯体となる。
3×6板を基準とした縦3層の壁は水切りと窓の役割を果たし、段状の陰影が外観の輪郭をつくる。壁を閉じると、前面を通過する人、揺らぐ植物、水盤などが、銀色の外壁に反射して浮かび上がり、家の存在を滲ませる。内部では階段室により各階の床が垂直に繋がり、架構を通過した小さな光が土間を照らす。壁を1枚開くと、外観に暗い穴のようなものが現れ、内部にはひと筋の鋭い光が差し込む。壁をすべて開くと、土間は街と連続し、水盤を反射した光が上部の架構に揺らめく。壁の開閉によって内や外から見えるものが切り替わる。その繰り返しによって、壁の向こう側にある見えないものを表象させるこの家は、どこか寺院のようでもある。朝夕、僧侶が建具を開閉することで領域が変化するように、日々のささやかな営みが、街角と暮らしをつくる。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 |
施工 | 桑髙建設(建築工事) |
飯沼克起家具製作所(別途家具工事) | |
金森正起(金物工事) | |
庭アトリエ(作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |