House in Tomisato|富里の家|2013
敷地は田園風景の広がる温暖な土地に位置する。建主である若いご夫婦は敷地後方の母屋で家族三世代で暮らしていたが、出産・育児などを踏まえ母屋前方の土地に新たな住まいを計画することになった。母屋との関係を断ち切るのではなく、心地良い距離感をもった独立した場として、家族やたくさんの友人が集える新たな住まいが求められた。
水廻りを集約した「石の間」と、居間や室からなる「板の間」によって建物を構成し、その間(あいだ)を玄関へのアプローチとした。母屋に対しあえて閉じることで、自立したひとつの存在として住まいを扱いながら、かつての土間空間のような使い方を想定した「石の間」へ人を導くことで、訪れる際の意識的な敷居を下げ、母屋との物理的、心理的距離のバランスを取った。
建物内部は、「板の間」である居間を中心に、窓辺のベンチ、踊り場、食堂、台所と同心円状に居場所を設け、空間ごとの素材や視線、天井高さを統一することでつながりと奥行きを与えた。居間の南に面する大きな開口部から射し込む強い光を、角度をつけた壁によって横と下方向へと導き、吹抜け空間に大きな闇溜まりをつくりだすことで、座の空間としての重心を整えている。
こうして浮かび上がる光の空間が、家族やたくさんの友人が集う豊かな場の中心として、また家族の成長と共に、そこで営まれる暮らしの記憶を闇の中へゆっくりと宿していくような静謐な場となることを考えた。
2階は、居間上部の吹抜けとスリット状の階段室を介して闇の中に埋没させることで、眠りのための静けさと光の射す1階への意識を喚起させる。
陰翳や素材のもつ本質的な単純さを建築に宿すためには、それらを注意深く素直に見つめ続けることが必要だと思っている。
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*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
施工 | 尾崎工務店(建築工事) |
写真(Web) | 新澤一平 |
写真(PressKIT) | 川辺明伸 |