Jissou-ji Temple, Priests’ Quarter Extension|実相寺庫裏の改修|2022
庫裏の改修計画。
建築は、建物と他者(自然・事物・存在)との関係性の秩序から見いだされる領域のようなものだと考えています。
建築は目には見えませんが、建物を介することで新たな発見や再認識の気付きを私たちに与え、感情の喚起という驚異がそこに生まれます。
建築設計という思考の視点を通して、様々な要件を関係づける建物を導き出し、建築を求めていきたいと考えています。
庫裏の改修計画。
新しいことは何もしていない。
建築における中庸とは何か。
ただそのことだけを、クライアントとともに追い求めていたように思う。
つくりだされた建築は、名も無きうつわのようだ。
そこにはただ空間があるだけである。
でもだからこそ、伊豆高原の自然と建築によって生まれる豊かな領域を身体に感じることができる。
そして、選び抜かれた美しい器や作品たちとの静かな出会いが生まれる。
種を蒔き、新たに芽吹くように、懐かしくも新しい感情が発露する場である。
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 梅原建設(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
クロヌマタカトシ(サイン) | |
うつわ祥見 KAMAKURA(コンセプト) | |
写真 | 川辺明伸 |
構造が象徴的な住宅の計画。
計画地は、景勝地として有名な三保松原と御穂神社とを繋ぐ神の道沿いに位置する。以前は訪れる人が減少傾向にあったが、富士山と共に世界遺産となったことがきっかけとなって、現在では国内外から多くの人が訪れる観光地である。
地元でバーを営む建主から、新たな観光資源となるドッグランを併設したガーデンカフェ兼住宅を建てたいという相談を受けた。魅力的な敷地ではあるが、毎日多くの人が往来し、大きな松が一直線に並ぶ強い軸線をもった神の道との接続の仕方を考える必要があった。
三保松原は風景と共に羽衣伝説で有名だが、リサーチに訪れてみると、松を抜ける潮風が心地よく、枝間からのぞく砂浜や青い海がとても印象的だった.それら三保松原の風景を構成する要素を建築に取り込むことで、神の道の軸線を和らげつつも拡張することができないだろうか.
神の道からガーデンまで建物を介して視線が抜けるようにアルミサッシで建物を覆う構成とし、機能、プライバシー、耐力壁が必要な一部を除いて同一規格サイズのサッシを縦横方向に展開した。階高も規格サッシサイズから天井高を割り出すことで決定している。店舗部分では雁行する松並木の印象をもとに一部柱スパンをずらした。それは京都の蓮華寺の柱と庭の関係のように、建物内から庭を見る時に柱上部が視覚から消失することで、感覚的に庭が引き寄せられる効果を期待している。住居部分についてもこの環境を最大限享受することを考え、同様に外部サッシを連続した扉のない一室空間とし風景と繋いだ。また同時に、将来建物すべてをカフェや住居、宿泊施設などへ柔軟に転換できることも視野に入れ計画している。植栽は、神の道の松並木からガーデンテラスの流れで徐々に柔らかな印象となるよう樹木を選定した。
連窓サッシから潮風が抜け、木々が揺らぎ、レースカーテンをなびかせる。神の道を歩く人びとが松並木を抜けてこちらへとやってくる。コーヒーを飲みながらずっとここにある立派な松を見上げる。それぞれの風景を眺め合い、行き来する羽衣の揺らぎのような柔らかな関係性が生まれた。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 大栄工業(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
September design 出口由果梨(サイン) | |
写真 | 川辺明伸 |
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 桑髙建設(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
植真 太田真光(作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
旧東海道。JRと私鉄。さび付いた鉄橋。川石でつくられた塀。路地。階段。古い寺院。大きな工場。新しい住宅群。高速道路の高架。街を囲む山々。天気の良い日にだけ見える富士山。
静岡県島田市金谷地区の高台にある敷地からは、街の古い部分と新しい部分、地形を貫くように流れる大井川、変わらない遠景を一望することができる。良くも悪くも時間を掛けて混ざり合い形成された街という塊を、ひとつの風景として感じられることは純粋に素晴らしい。
計画地は道路からひな壇上に傾斜した土地で、地形に合わせてうねるように積まれた川石の塀によって形成されている。北側へ開かれた丘陵地のため台風や強風などの被害が比較的多く、設計中にも屋根や外壁を損傷した建物が散見された。土地にはもともと古い家屋が建っていたこともあり、平地部については安定していたが、石塀を調査してみると土留めとしての構造耐力は期待できなかった。石塀を安全なものにつくり替えたり、敷地全体を造成するには予算の問題とともにこの場所の魅力を削ぐことになってしまう。
そこで、蜘蛛が糸をつかって様々な場所に巣を張るように、敷地条件をほぼそのまま引き受けつつ、単一の木材によって風景を編み込む住まいを考えた。まず、石塀を崖と見なし、安息角内にベタ基礎を定着させた。その上に120角のヒノキ材のみを用いて架構を跳ね出させながら井形に組むことで、各階の内部に柱のない構築体をつくりだした。1・2階ともに北側の連窓から風景を取り込み、南側のハイサイド窓等から日射を取り込む構成とし、建物外周には同寸の斜材を設けることで架構のねじれ防止と、崖崩れなど不測の事態にも耐え得る構造耐力を確保した。玄関及びアプローチ部分については跳ね出すことで上部地盤との縁を切っている。断面形状は構造材と同寸のH120mmピッチとなる高さを設定し、30×105mmのヒノキ材を120mmピッチで外壁に張ることで、跳ね出した架構との干渉を避けつつ、台風等の被害や老朽化に対して一枚単位での交換を可能にした。その他架構部材についても、統一したボルト締めによって将来的な更新を見据えている。またアルミサッシ部分は外壁同材をルーバー状に差し込むことで、日射調整及びプライバシーを確保した。
構築体によって風景を編み込むということは、街や自然の時間をこの場所に定着させるということだ。街の重ねてきた記憶(歴史)と、この場所で新たに暮らす人の記憶が混ざり合い、新しい風景が生まれることを願っている。
*DETAIL > PRESS KITにて、より多くの写真や図面、プレス用のPDFファイル等をダウンロード頂けます。
*ENGLISH|Getting Ready...
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 桑髙建設(建築工事) |
金森正起(金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
計画地は静岡県沼津市の中心部、周囲には住宅が建て込み、高等学校が見下ろすように建っている。隣接する住宅郡は、新旧含めておおよそ工業製品に覆われたつくりであり、高等学校はRC造で、塀越しにCB造+折板屋根のガスボンベ庫、金属ゴミ置場、駐車場が隣接している。見える範囲の近隣地にはコンテナが無造作に置かれ、周囲に緑はほとんどない。
これら周辺環境からマテリアルを選定したり、空間構成を導き出していくことは間違ってはいない。だが、コンテクストへの応答という思考の流れだけに終始してしまうと、いつのまにかクライアントを置き去りにしたり、何より建築の奥行きのようなものが失われてしまうと常々感じている。コンテクストを読み解くことと同時に、人の感情に作用するような建築のつくられ方を考えたい。
ここで試みたのは、周辺のコンテクストから空間構成や架構などを読み解くと同時に、この場所において直接的なコンテクストにはなりにくく、また人の触覚に作用する素材ーここでは木材を選定ーから寸法体系やディテールを検討し、その両方が融合する状態を求めていった。安価で耐久性のある樹種、手に入りやすい歩掛かりの良い寸法、表情あるテクスチャーなど木材単体のコンテクストを抽出・検証し、30mm×60mm×900mm赤身杉材を環境を読み解く為のひとつの単位とした。杉板の外壁は高さ方向に@900に積み上げて形成し、平面方向は@60mmに敷き詰め、内部空間は900mm若しくはその半分の450mmという材寸法単位に従って気積を規定した。開口部も同じく規定しつつアルミサッシを室内側へセットバックして納め、割付けに合わせて外壁を格子状に抜くことでプライバシーを確保している。唯一大きく開くことのできる南東面にバッファーとなる中庭を設けて光と風を取り込み、テラスは街を抜けた先の山々まで空間をつないでいる。
土地のコンテクストから構築体を生み出すことと、寸法を含めた素材単体のコンテクストから空間の気積やしつらえ、ディテールを生み出すことは役割が違う。前者は自然との応答を、後者は人との応答を意味し、それらを融合することで自然と構築体による長大な時間軸の中に人の感情や記憶の拠り所をつくる。その混ざり合った領域が建築なのだと考えている。
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 大栄工業(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
計画地は、三島市から箱根へと抜ける旧道沿いの高台に造成された分譲地である。設計段階に訪れた団地にはまだ建物もなく、段状に造成されただけの敷地には設計の手がかりとなるものは希薄だった。少なからず環境を平準化してしまう分譲地においては、より広い視野をもって、人の手では変わることのない風土を見い出し取り入れる思考が必要になる。リサーチ範囲を広げて古くからある旧道沿いを歩いてみると、谷のある地形と斜面に拡がる広大な畑、遠くまで連なる山々の美しい風景と共に、谷から吹く心地よい風や、風景に彫りの深い陰影をつくり出している日射しがとても印象的だった。
そこで、団地規定による敷地ごとの建物最大範囲から南側隣地の建物ヴォリュームを想定して、谷下から敷地へ抜ける風道を導き出し、その範囲上にLVLを重ね合わせた家型ラーメンフレームによる大きな軒下空間(パブリックリビングスペース)を設けた。そして、敷地に残る高低差を床の段差として取り込みながら、もう一方の1階に水回りと収納室、その2階に屋根裏空間(プライベートリビングスペース兼ベッドルーム)を設け、季節や時間帯、プライバシーなどに応じて居場所を自由に変えることができる谷のような地形を建物内につくり出した。ラーメンフレームの高さは、1、2階のヴォリュームと季節ごとの光の入り方を踏まえ決定した。メインフレームの東側には、南北に抜ける玄関と農作業時にベンチとしても利用できる土間、農機具などの収納スペースを、LVLフレームをかみ合わせることで設けている。
子供たちが土間テラスと大きな軒下をぐるぐると回りながら楽しそうに遊んでいる。大人たちは木陰のテラスで立ち話をし、猫はお気に入りの階段で昼寝をしている。土地固有の環境が風土をつくり出し、暮らす人びとの記憶を育んできたわけだが、谷風の抜けるこの大きな軒下が家族や近隣の人達を大らかに包み込み、かつての縁側や土間のようにこの地の風土と記憶を育み、継承していくことを願っている。
意匠 | 山田誠一建築設計事務所 山田誠一 |
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構造 | 高橋俊也構造建築研究所 高橋俊也 |
施工 | 大栄工業(建築工事) |
山脇豊左官 山脇豊(別途左官工事) | |
飯沼克起家具製作所 飯沼克起(別途家具工事) | |
金森正起(別途金物工事) | |
庭アトリエ 金子達郎 金子周代(別途作庭工事) | |
写真 | 川辺明伸 |
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